》と同様な、陰惨なものであったろう。
「さあさあ……」
鷲尾老人は、なかなかの上機嫌らしく、そこに散らばっている変圧器《トランス》や真空管《ヴァキューム》などを片づけると、僅かな席をつくってくれた。
白金神経の女
「へーえ」
しばらく、この奇妙な地下の研究室を見廻していた私は
「一体、何を研究されているんですか……」
「電気じゃよ、しかもわし[#「わし」に傍点]のは機械を相手とする電気ではなくて人間を対象とする、つまり恋愛電気学を完成しようと思っての」
「ですけど……、どうも人間と電気とを一緒にするのがハッキリ飲込めないんですが……」
「まあ、最初は無理ないさ。しかし君、以心伝心という現象を知っとるかね、つまりこちらの思うことが、言葉を使わずに、直接先方に伝えられる――この現象をなんといって説明するかね、一寸六ヶ敷いじゃろう。……これは電気学的に説明が出来るんじゃ、感応作用、相互誘導作用、じゃよ――、つまり考える、ということによって脳に一種の電流が生じる、これに感応して相手の脳髄に電流が誘起されるのが以心伝心という現象なんじゃ。しかしこれも感度のいい頭の奴と悪い奴があ
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