ました……。もう一度叔父に会いたいと思っているうちに動き出しちまったもんですから……。」
ぴょこりと一つ頭を下げると、出来るだけ好意をもたれるような笑顔を作った。
「まあ、今迄デッキにいらしたの……、よく飛ばされなかったわね」
「まったく……、えらいスピードですね、おまけにすーっと出たんで何時《いつ》動き出したんかちっとも知らなかった」
と一と息して
「――それにしても、一向エンジンの音がしませんね」
「エンジン――?」
彼女はききかえしたけど、すぐ独りで頷いて
「そんな旧式なもんつけてませんわ、これ電気船ですもん」
「ははあ、するとやっぱり蓄電池かなんかで……」
中野は、そういえばこの船がスマートな流線型であるのは、煙突というものがなかったせいだ、と気づいた。
「蓄電池なんて、そんな重たい場ふさぎなもんなんて、使っていませんわ」
「へえ――、するとどういう仕掛けで」
「どういう仕掛けって、なんていったらいいかしら、無線で電力を受けて、それで動かしているのよ」
「ははあ……」
「つまりラジオのように放送されている電力を受けて、動かしているわけ」
「……うまいことを考えたもんです
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