、何か頷きながら中野を麾《さしま》ねいた。
「え、なんですか……」
「一寸、ここに寝てくれんか」
傍らの手術台のようなものを指した。
「えっ、こ、ここへ?」
「いやか」
「いやですよ、何処も悪くないです」
「今更いやじゃ困る。これを頼もうと思ったから、黙って連れて来てやったんだ……」
「ど、どうするんですか」
「どうもせんよ、一寸モデルになって貰えばいいんだ」
「モデル――?」
途端に中野は、すっかり意味が飲み込めた。向うの椅子に、ずらりと並んでいる人相の悪い連中が、美男型の中野ソックリの貌《かお》になろうとしているのだ。
叔父の言葉によると、どうやらそれを眼あてに彼をこの島に連れて来たらしい。彼は一つの見本《サンプル》として連れて来られたのだ。
中野は、夢中で逃げようとした。パッと身をかわしたつもりだったが、それよりも早く、禿頭の医者にぐいと右手を執《と》られてしまった。
「あっ――」
と思ったのは、掴《つか》まれたばかりではなく、その上、チクリと針を刺されたような痛みを感じたからである。
と、同時に、急に体の力が抜けてしまった。余程強い薬を注《さ》されたらしい。
中野
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