づけている。真空の宇宙だから止《とど》まることはない。無限に運動をつづけているわけだ……つまり、一つの星となってしまったのさ」
 流石に、細川三之助も暗然として、ドアーを閉ざした。そして
「なアに、こんどは成功するさ。もうすぐ月世界に、第一回の日章旗をたてて見せる。こんどは先刻《さっき》一寸いった整形外科へ案内しよう……」

       七

 その部屋の番号は第六六五号だった。
「さあ、中へ入って……」
 叔父はどんどん入って行った。中野も続いて行った。
 あの、慶子ソックリの美女を造る整形外科室と聞いて、中野は、一段と眼を欹《そばだ》てながら、ドアーを潜《くぐ》った。
 まだ奥にも部屋があるらしいが、その最初の部屋は、一寸病院の診察室といった感じだった。しかも、最早美女の施術は終ったのか、傍らの椅子に、ずらりと並んでいるのは、あまり人相のよくない男たちで、突然入って来た中野の方をじろじろ流し見ては、何か小声で囁きあっていた。
 細川三之助は、一向そんなことには頓着なく、奥でカルテを見ている白衣を着た禿頭の老人の所に行くと、しばらく何かぼそぼそと話しあっていたが、やがて、その二人は
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