がら、その断髪の頭を振って見せた。
「そうかね、……あんまり眠り病、眠り病で研究させられているところに、ばたばた人が倒れるのを昨日からさんざ見せつけられたんでカッとなったかな」
「そうかも、しれないわ、だけど、早いわね、ずいぶん」
彼女が、はあはあ息を切らした時分に、やっと林のあたりまで行きついた村田が、急に立止って、こんどはうろうろしているのが見えた。
「やっと止まったわ、何さがしてんでしょ」
「あ、ゲンもいる、ゲンも――」
喜村は、村田よりも、ゲンの方が気になっていたらしい。
やっと追いついて
「どうしたんだい、一体。――あ、ここは昨日眠り病が出たという家だぜ」
「しーっ」
村田が、手を振って制した。ゲンが唸り出したのだ。眼を光らし、牙をむいて、そこの農家の二階づくりの納屋を見上げている。
「うーん、ここだな、この納屋の二階だ」
村田も、低く唸るようにいって、眼を光らした。そして
「君、ちょっと待ってくれよ」
いいのこすと、意を決したように、納屋の入口の藁《わら》たばをがさがさ鳴らして踏み越えて行った。ゲンも、尾をぴんと立てて続いて行く。
「なんだろ、こりゃ――。まるで
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