。……そんな真蒼《まっさお》な顔をして」
「だって、だって山田が急に倒れたのよ、犬小屋の前で寝てしまったのよ」
「えッ、山田が、寝てしまった?……」
 喜村の顔にも、さっと青い恐怖の色が流れた。
「なに、眠り病ですか? 占《し》めたッ」
 村田は、そんな辻褄《つじつま》の合わぬことを叫ぶと、ぱっと部屋を飛出した。
 喜村も美都子も、あわててその後を追駈けて行った。

       五

 部屋を飛出した村田は、庭を抜けて犬小屋の方に駈けて行く。
 そして、盛んに吠たてているゲンの犬舎の前まで来ると、後から行く喜村と美都子が、あっ、と思う間に、金網の戸を開けてしまったのだ。
「おい、村田!」
 喜村の制止する声も間に合わなかった。
 そればかりか、得たりとばかりに飛出して、柵をくぐり抜け砂気の多い道を林の方に駈けて行くゲンのあとを、村田もまた夢中になって追駈けて行くのだ。
「おーい、おーい」
 仰天した喜村は、いくら呶鳴《どな》っても振向きもしない村田のあとから、美都子と肩をならべて駈けだした。
「仕様がないな、どうしたんだろう」
「ヘンねえ、少し来たのじゃないかしら」
 美都子は駈けな
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