につれてほかのまで皆んな吠出してよわりましたが……」
「ゲンか――、あいつは一寸神経質だからね……、それだけかい」
「はい」
「ありがと。――村田君、こんやは遅いからあしたゆっくり案内してやるよ」
「うん、その方がいいや、僕も一寸つかれてる」
「やだね、まさか眠り病じゃあるまいね」
「冗談いうなよ……しかし、ちょいと飲んで汽車に乗ったせいか、いい具合に眠くなった」
四
翌朝、うつらうつらしていた村田は、喜村のために、無遠慮に叩き起されてしまった。
「な、なんだい――」
「ああよかった、眼が覚めたかい」
「え?」
「まあこれを見ろよ、東京じゃ大騒ぎだぜ、眠り病が大|猖獗《しょうけつ》だ……、君もあんまりよく寝てるからやられたんじゃないかと思って心配しちゃったよ」
「なんだよ一体」
「まあその新聞を見ろよ、デカデカと出てる、きのうの東京は今までにない物凄い発病者だとさ」
「へーえ……」
村田が、眼をこすりながら、突出された新聞の社会面を見ると、なるほどそのトップに四五段を抜いて、
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帝都・眠りの死都と化す
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といったよう
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