てあったようでしたが)その村尾君も相変らず元気でしょうか。今日もらった手紙によるとだいぶ神経衰弱ではないかと思われる節《ふし》があるのですが……つまり元素変換の実験について疑問を起し、果てはこの地球を爆砕してしまうといったような過激なところがあります、様子をよく見た上、御一報下さい。八月十五日附――。

 すると、石井みち子へはまだ木曾の手紙が着かないと思う頃に、行き違いに再び村尾からの手紙が届けられて来た。
 村尾健治から木曾礼二郎あての私信。
 ――前便でだいぶいろいろなことを申し上げましたが、ほんとうに僕の抱いている不安というものがおわかりになったでしょうか、この恐怖は未だかつて地球人が誰一人として想像もしなかったであろう恐怖です、超大巨人によって我が宇宙が爆撃されるというのっぴきならぬ不安は……。しかもそれがいよいよ嘘でも冗談でも想像でもなくなりました。
 というのは僕の実験室で大異変が起ったのです。僕はこうしてお知らせの手紙を書きながらも胸がしめつけられるような気持がするのですが……、その大異変というのは実験材料として置いた一粒の水銀が、いつの間にか忽然として自然変質をしてし
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