えいたします、研究所も、思いのほか立派な建物をそのまま頂戴いたしまして(以前にはココ椰子の会社だったそうでございます)いま私がこのお手紙を書いております部屋を、丁度赤道が通っているのだそうでございます。
 私の仕事――赤道上に於ける南北極の磁力の影響――ということは、まだまだどういう結果になるかわかりませんけれど、いずれ準備が出来ましたらオッシログラフで精しい曲線を取ってお知らせ申し上げますが、一寸考えただけでは、両極から同じ距離にある赤道の上では、両極の磁力の力が平衡しているように思われますのに、実際は始終どちらかに浮動している様子でございます、これはだいたいいつぞや申されましたように地球の極がふらふらしておりますためか、地球が、鋼鉄で出来た永久磁石のようにはっきりとした磁石でないせいか、それとも、空気中の電磁的影響のせいか、なかなかむずかしい事のようでございます、それからもう一つ面白いことは、赤道の上ではどうやら北極――北半球から来る磁力線の方が、南から来るものよりも多いようでございます、これは普通の磁石ならば、その両極から出る磁力線の数が同じである筈でありますのに、こういう違いが
前へ 次へ
全40ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
蘭 郁二郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング