あると申しますのは、どうも考えられない妙なことでございます、これもまた、地球というものが、私たちの知っている磁石とは別のものでありますのか、或いは又、南からの磁力線が宇宙の中に吸収されてしまいますのか、それとも、北半球には南半球に比べてずっと陸地が多いということが、何かの原因になっておりますのか――。
ずいぶん堅いお手紙になってしまいました、こんなことを書くつもりではございませんでしたのに、つい今、気にかかっておりますので筆が正直なことを書いてしまいました。それから、村尾さんたちのサイクロトロンは、まだ準備に時間がかかるようですので、それまで私の方を考えて頂こうと思っております。
昨日の川蒸気で、ポンチャナクから日本のお味噌を持って来てくれました、それで今朝は、とてもおいしい味噌汁《おみおつけ》が出たことをお知らせいたします。五月十二日附―。
五
村尾健治から木曾礼二郎あての私信。
――東京は、この手紙が着く頃はそろそろ梅雨《つゆ》にはいることと思います。東京のあのじめじめと降りつづく雨から、僕たちは開放されたわけです。青空、そして豪快な雨――。僕は内地が世界
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