がつけられていなかった、だからボルネオは東印度の、いや世界の暗黒島といわれていた、しかし今度は東亜文化を西漸せしめなければならん、それには既に敵の手をつけた施設を流用するのもいいが、取りのこされていたボルネオに先ず東亜文化の一燈をつけるのも面白いじゃないか――とこんな風な、味なこともいっていたよ、それからその中には所長も出かけるといっていた、しっかりやってくれんと困るぜ、僕もここで、君たちに負けんつもりでやる」
「やります、僕は金《きん》の創造を、西洋の錬金術師が数百年かかって出来なかった金の創造というやつを、元素転換で工業的にやってのけたいと思っていますからね、現在のサイクロトロンといったものではまだまだとても駄目です」
 村尾は、その神経質らしい迫った眉に、真剣な色を浮べていた。
「うん、そうだね、現在のサイクロトロンじゃあまだ一匙の水銀を転換させるのにだって何日かかることだか……一グラム何千円という金を造っていては、金を造って破産することだ、はっはっは、――石井さんは?」
「さあ、私は、研究室の皆さんが病気をされないように、それだけを心がけたいと思いますわ、それ以上のことは出来そ
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