ような化物の西瓜《すいか》や南瓜《かぼちゃ》、さては今にも破裂しそうな風船玉を思わせる茄子《なす》――そういった、とにかく常識を一と廻りも二た廻りも越えたような巨大な作物ばかりが、累々として二人の眼を脅かすのである。
世にも奇怪な眺めであった。
これが茄子なら茄子、柿なら柿と、ただ一つのものだけならば、それがいかに桁《けた》はずれの大きさであってもこうまでは愕かされはしなかった筈だ。寧《むし》ろ九州地方の茄子のように、あの白瓜ほどもある大きさを、面白く思ったに違いないのだ。
だがこうして、あらゆるものが化物のように巨大に発育している姿を、まざまざと見せつけられるとなると、地球全体が二人だけを残して、いつの間にか膨《ふく》れあがってしまったような、取りとめのない不安に襲われて来るのである。
いまにも象のような犬が飛出して来るのではないか、背後《うしろ》から大蛇のような蚯蚓《みみず》の奴が我々の隙をねらっているのではないか――そんな狂気|染《じみ》た気持にさえなって来る。
「昌作さん、引返そう、――帰ろうじゃないか」
英二の声は、少し嗄《しゃが》れていた。
「うん――」
二人は
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