か何んというか、大きなフットボールのような柿の実が、陽射しを受けて艶々《つやつや》しく枝も折れんばかりに成っているのである。――とても信じられぬ有様だった。
 大村にしても英二にしても、もし独りでここに来たのだったら、到底信じなかったに違いない、見間違いとして、却って自分の眼の方を疑《うたぐ》ったに相違ないのである。またそうだったら、あとからも他人《ひと》にこんな話をする気にもなれなかったであろう。――誰だってこんな途方もない栗や柿の話など、バカバカしいばかりで、とても信じてはくれそうもないからである。
 だがしかし、今は二人だった。二人の四つの眼で、たしかにそれを見ているのである。
 大村と英二は、一寸顔を見合せてから、急にすたすたた[#「すたすたた」はママ]と歩き出した。巨大な実をもった柿や栗の化物のそばから、とにかくはなれるつもりだった――が、それから二三十|間《けん》も行ったであろうか、道の両側が畠のように展《ひら》けているところまで来て、またまた愕《おどろ》かされてしまったのだ。
 これは確かに畠であろう、しかし糸瓜《へちま》のように巨大な胡瓜《きうり》、雪|達磨《だるま》の
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