考えられるんだ、――地球の人間は、動物が進化してここまで来た、しかし火星の人間は、動物ではなくて、植物が進化して我々よりももっともっと進化した火星人になっているかも知れない、とね」
「…………」
 英二は気味悪そうにあたりの草木を見廻した。草や木が人間のように進化した姿など、考えてみただけでも無気味だった。
「しかし、どっちにしたって動物でも植物でも、地球よか歴史が古いだけに、ずっと進化しているに違いないね、例えば火星にも栗の木とか柿の木とかそういったものがあるとすれば、丁度こんな風に見事に……」
 そこまでいった大村昌作は、ギョッとしてそのまま立ち竦《すく》んでしまったのである。
 英二も、硬張った横顔で、眼ばかりギョロギョロと動かしていた。
 何時の間にか二人は、何んとも、得体の知れぬところに、迷いこんでしまっていたのである。
 秋の陽は、澄み切った青い空からあたり一面に、サンサンと万遍なく降り灑《そそ》いでいる――だから夢ではない。
 いや、つい先刻《さっき》、こうやって二人連でぶらぶら話しながらやって来て今まで、溝一つ飛越えた覚えはない――だから此処《ここ》は、現実と飛離れた別
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