」
「うん、しかしあれはまだ正体がハッキリしていないんだよ、だが、植物のあることだけは突止められている。火星には空気もあり、しかもそれは酸素を多く含んでいる。酸素は活溌な元素なのにそれが自然に遊離しているからには植物があるに違いない――というわけさ、その上火星の夏には青々としていた所が、秋になると次第に黄ばんで来る、これは其処《そこ》に植物が繁茂している証拠だといっていいだろうね」
「ちょっと、ややっこしくなって来ましたね」
「ややっこしいもんか、とても面白いじゃないか、こんな風に、たしかに植物が生えているっていうのは、あとにも先きにもこの地球以外には火星だけしかないんだからね」
「成程ね、でも太陽からは遠いし、ひどく寒いんじゃないんですか」
「そりゃ寒いだろう。しかしこの地球だって年中氷にとざされている南極にも、ペンギン鳥のような生物がちゃんと生きているんだからね。寒さに耐える生物がいるんだろう……、もっとも火星の生物は植物にしても動物にしても、地球のものとはまるで違っているかも知れないけど」
「そりゃそうでしょう、進化の途《みち》が全然違うんですからね」
「うん、そしてこんなことも
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