ろう」
「大きく出ましたね」
「ふふん、しかしそれとは逆に、地球人がまごまごしているうちに宇宙の天外から、この地球めがけて来襲するものがあるとすれば、それも先ず火星人以外にはないといっていい」
 大村はそういって、一寸うしろを振りかえった。誰か跫音《あしおと》がしたように思えたのだ。果して振り向いて見ると、何時あらわれたのか中年の男が一人、見渡すかぎりの草の道を、大村たちと同じようにゆっくりと歩いていた。しかしその男は、今夕から尋ねようとしている私設天文台の人のようではなかった。この辺の人が町に買物に行って来たように、風呂敷包みを、ぶらんぶらんさせて歩いていた。
 大村は、そのまま気にも止めずに向き直って、又、英二と肩をならべたまま、あてもない草の道の散歩を続けていた。

     別の世界

「火星に人が、つまり火星人というものがいるでしょうかね」
 英二も少しは興味をもって来たのか、それともただバツを合わせるだけのものだったのか、そういって昌作の話の後を促した。
「いるかも知れない。いてもいい条件があるんだからね」
「そうそう、だいぶ前に『火星の運河』っていうのが問題になりましたね
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