の最上の形に変って発達して行くことだ。しかしそのために形が大きくなることもあり得るわけである。だから、自分たちが普通に見ている栗や柿も、あれが精一ぱいのものではなくて、気候とか養分の摂《と》り方に、もっと適応し逞《たくま》しく進化して行けば、此処で見るような巨大な実を結び、花を咲かすことが出来るのかも知れない。
「火星の植物にすっかり考えこんでしまったようですね、はっはは」
志賀健吉は、茶碗の茶を一呑みに空けると、いかにも愉しそうに笑った。そして
「いやあ、一寸お詫《わび》をしなけりゃならんですが、今までご覧に入れたのは、皆な火星の果実でもなんでもありません、この地上のものですよ」
「なんですって――?」
大村が、思わず聞きかえした。
「火星から、ひょっくり植物のタネが来るわけもないじゃありませんか、実はさっきお二人がさかんに火星の話をされていたようだったし、そのあとで私の作った作物に愕かれたようだったんで、ひょいとそんなことをいってしまったんです……」
「ははあ……」
「しかし、これらはたしかに普通のものじゃありませんし、あとでこれを市場に売出す時には火星の栗とか、火星の茄子とか
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