年と思っていたのは間違いで段々若くなって来るように思われる。もしかすると大村と同じぐらいではないか、とすら思われて来た。
「早速ですが、さっきのお話の……」
大村は、それだけいって、口を噤《つぐ》んでしまった。
この、異様な火星の果実に取りかこまれた中の一軒家に思いもかけなかった少女が、しとやかにお茶を運んで来てくれたからである。――それは、さっきから妙なものばかり見つけていたせいか、水際だった美しさに、突然ぶつかった感じだった。
「いらっしゃいませ、どうぞごゆっくり」
「はあ、どうも……、突然|上《あが》りまして」
「いいえ、兄はいつも退屈しておりますから、きっと無理にお誘いしたのでございましょう。今日は、丁度菊も咲きましたし……」
「はあ――?」
大村と英二が思わず顔を見合せてしまったのは、つい庭先の、遅咲きの向日葵《ひまわり》だとばかり思っていた大輪の花が、そういわれて見れば如何《いか》にも菊に違いないことだった。こんな巨大な花など見たこともなかった。
これもまた、長い進化を重ねた『火星の花』であろうか――。
けれど、進化とはただ形だけが大きくなることではない――その物
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