巌高き山のほそ路つづら折わが松の戸を覓《と》めくるや誰
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歌の中山に移り住みて詠める、くさぐさの歌。
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事しげき憂き世のがれて隠れ栖む巌秀《いはほ》もおなじ天地の中《うち》
事しげき都は常に見わたせどうき世の塵をはらふ山かぜ
わが住める山の峡《かひ》より見わたせば都は雲の下《した》にぞありける
山科《やましな》を越ゆるあらしの音づれにこたへて動く庭の柴垣
隠れ栖む宇多の中山なかなかに身を捨ててこそ世は知られけれ
汲むほどは足らぬ日もなし巌間水《いはまみづ》すみよかりけり歌の中山
住む庵は歌の中山おくまへて入らまほしきは敷島の道
門《かど》に立つ古りし榎に栖む鳥の朝啼く声にわが目さますも
たのまれぬ老が命をおもふにも今年は花の惜まるるかな
柴の戸をおほふ高嶺のしら雲はいつ紫の雲にかはらん
ひとり栖む山を静けみ真木の戸もささで白める月を見るかな
忘るなよ七十路こえて馴れし月かげこそ老が目には疎《うと》けれ
初尾花そよげば老がそら目にもとまりて涼し秋の初風
訪ひきても人は帰れどわび人
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