見れば悲しとぞ思ふ

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またの年の秋も更けて。
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千とせもと契りし人はなくなりて一人も聞くか荻の夕風

なにゆゑに涙のもろき我ならん月見る毎に眸《まみ》のしめれる

山松の梢を月ははなれけりなどか我身の世に曇るらん

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明治三十一年の秋。
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妹にわかれ三とせ著ふるす古ごろも肩のまよひを縫ふ人も無し

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折にふれて。
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人ごとに貴《たか》き卑しき品はあれど命の種《たね》によしあしは無し

さがなくも人は言ふともよしゑやし我は黙《もだ》して事なくぞ経ん

否も諾《う》もわれは辞《いら》へじかにかくに人の心は人に任せめ

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画讃。
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ゑらゑらにうたぐるばかり酔へる人声《こわ》づくりして首のみぞ振る

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山家。
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