を思ふまことは月にこそあれ
物おもふ秋の夜頃は草の虫ねに出でてこそ老も泣かまし
守《も》るとては心なやます身を捨てて西へや月に伴はれなん
秋ふけてみ山もさやに小竹《しぬ》の葉のさやぐ霜夜を独ぬるかな
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明治三十年六月十七日、山階宮晃親王殿下の、若宮菊麿王殿下おなじく御息所と共に、わが清閑寺に成らせ給ひ、日もすがら物語らせ給ひける忝さに。
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夏草の露の庵ゆゑみ車を無礼《なめ》くも今日は濡しつるかな
ほととぎす初音にそへて大王《おほぎみ》にたてまつらまし清き山かぜ
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秋野。
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いざ行かん露もつ尾花をみなへし目うつりのよき野辺の秋見に
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武人。
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おほぎみの御楯《みたて》となるを待ち申す命は早くたてまつりつつ
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失題。
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かつは笑みかつは怒りみ世の中は童《わらは》ごとし
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