たのです。珍らしいから、一ト晩ぐらいはひき止められるかもしれない、と言いおいて出かけましたのに、暮れきらないうちにしょんぼり皈ってまいりました。話をきくと、伯父はともかく悦んではくれたそうですが、伯母のあとには後妻が入っていて二人の子まであり、伯父と良人が話している傍から離れずにいるものです故、何んとなく部屋の空気が堅くるしく、金の話をせずにきたとの事、折角の足代も無駄になったというもの、仕方なく一時の融通かたをたよりで頼むと、大方どこぞよりきた手紙らしいペン字で書いた罫紙の裏へ筆太に書かれた返事には、お民がいない今は貴方と自分とは何らのつながりもない他人である事、金を融通してくれとの話であるが何か抵当物をお持ちか、自分は小口は余り好ましくないが、まア昔の縁故もあることだし話には乗ってみよう。但し日歩は十銭がぎりぎりだ、というような商談だけがしるされてありました。
大隅には後妻の里があり、戸部の伯父は大きな農園をもそこで経営しているとのことです故さぞ立派な財産をおもちでしょうものを、今更羨やんだところで詮ないことでございます。世の無情に泣きくれる良人をみては、わたくしとて生き甲斐のあ
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