は何んとも言うてはこず、母からの返事に、夫婦ひき分けて、鶴江は自分らが引きとり、わたくしをば再縁させるつもりのところ、わたくしが言うことをきかず、親すら捨てて一緒になった良人故苦労は覚悟の前、と言ってやって以来、父の怒りがとけず、親でもない娘でもない間柄で金の無心などきいてやる訳がない。苦労苦労言うても、自分から好きこのんでする苦労ではないか、と相かわらずの一徹さ、口では喧ましく言うても親爺さんも何せ年をとりなすったから……とのたよりに、ただ訳もなく泣けて泣けて……。巻紙の中には七円入っていましたが、これだけ集めるのにどんなにか母は心を痛めたことでしょう。さしずめ宿賃や米代の払いにし良人の体がすこしでも快くなったら売られるものは売り払って久留米辺りまで出よう、と語り合っている内に、岡村のあに様よりたよりがあり、大隅にいる戸部の伯父を訪ねてみてはどうか、と知らせてまいりました。
 あね様にはまだお話してなかったと思いますが、戸部の伯父というのは良人の実の伯母のつれあい[#「つれあい」に傍点]なのです。伯母が亡くなってからはここ七八年もゆき来をせず、久留米をひきはらって大隅へ移ったというこ
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