れて歩くのは不憫にて、幸い、あと継ぎがないから、という岡村のあに様のたっての所望に、倅の身のためとも思い絞らるる胸をおしほどいて渡しはしたものの、忘れる日とてはなく、立派な学校へ入れて頂いて居ります仕合せも我がことのように嬉しいのですが、たよりの度に伊助が伊助が、と伊助を恩にきせた金の断り様、いつぞや訪ねた時の、大食いの、穀つぶしの、と育ち盛りの子をつかまえての叱り様を思い合せては、この身もつらく、手を合せて貰ってくれ、と願ったわけではないのにと、時には愚痴も言いとうなるのです。いかに落ちぶれたとて生れた土地だもの、岡村の家へは頓着なしに是が非でも皈ろうと意気まく良人をなだめて父の許へ無心のたよりをやりましたところ、母の名前でこっそり十円、別に小豆だの小麦粉だのを、親爺さんには言わんといて、と副え書きして送ってくれました。どうせ店にある品故、こうして時折り送りたいとは思うのだが親爺さんの頑固がいまにとけず、この十円をまとめるのも並大抵の苦労ではなかった、と母のたより、ただただ有りがたさで胸のふさがる思い。その金で養生をします内、何んとした不仕合せなことか鶴江がチブスみたようになり一時は
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