がね、あぶらやさん、わしも酔狂であんたに頼んだでねえです。保険会社から喧ましく人がきて、先月末を期限で費った金を纏めて送ることになっているで、これを送らねえと、勢い保証人になった町長さんにも大迷惑をかけるで、わしもこの町にいられねえし、なんぼ仙太さん付いててくれても高も肩身が狭くなるべし、それや親戚づきあいで利子はまけて貰うとしても、ちっとばかしの田を抵当にするって初めっから言ってるしべ。それを承知していながら、せっぱ詰った今になって算段つかねえじゃあ、まるで、わしをぺてんにかけたようなものだ。お聞きでしょうがな、あんたは金は貯まってるが、人がしっかりしすぎているって町中の評判でして。人を見殺しに出来るですからな」
こうなると仙太の母親は黙っていない。
「木工の会社さは、出すべき筋で出してるんで、いちいち、あんたから文句言われる道理がない。親戚親戚って、勝手に費った借金のあと始末じゃあ此方が元も子も失くしてしまわあ。仙太のさきざきを考えてみたって、まるで、孔のあいた金袋しょってる様でねえしか」
あぶらやが加勢する。
「七百円の大金を五年無利子で融通して上げようというのに、自分の貸金
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