」
茶を注いでやりながら姑はつぶつぶの光った眼で西尾を見あげて笑った。
「そうだとも、おっ母さん。今頃は先生食い放題だな」
西尾は年寄りの顔から眼を逸らして、無暗と茶を飲んでいたが、清子が上ってくると声をかけた。
「奥さん、田舎さ帰ったら当分はお寂しいこってしょうね。なかなか東京が忘れられませんよ」
「何しろこちらが長いんですものね。でも田舎へ帰ると子供相手ですから、まぎれますわ」
「ああ、それじゃ学校のほうお決まりですか」
「助役さんにお願いしてありますから……それに校長先生からも大丈夫だってお手紙いただきましたから」
「あの校長さんは親切だからなあ。僕は、高等科で教わったが……赤髭コって渾名でね、先生よく水っ洟をチカチカ光らせてやって来たもんだ」
小学校時代の話になった。西尾も清子も郷里のその小学校の出身だったけれど、当時の訓導で今もなお残っているのは、その赤髭の老校長だけだった。
「五城目が駄目だったら馬川か飯田川の学校へ頼んでみるつもりでしたけれど……飯田川には、わたしがいた頃の先生方もまだ大抵残っていますよ」
清子は結婚前その飯田川の小学校で代用教員をしていた。
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