茶粥の記
矢田津世子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)姑《はは》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)山|間《あい》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+宛」、第3水準1−84−80]
−−

 忌明けになって姑《はは》の心もようよう定まり、清子と二人は良人の遺骨をもって、いよいよ郷里の秋田へ引き上げることになった。秋田といってもずっと八郎潟寄りの五城目という小さな町である。実は善福寺さんとの打合せでは五七日忌前に埋骨する手筈になっていたけれど、持病のレウマチスで姑が臥せりがちだったし、それにかまけてとかく気がすすまない様子なので、ついこれまで延びてしまった。それというのが四十九日の間は亡き人の霊が梁のところに留っているという郷里の年寄り衆の言い慣わしに姑も馴染んでいるためで、その梁の霊を置き去りにすることが姑にはどうにも不憫でならないらしかった。
 荷をあらかた送り出して明日立つという前の朝、清子は久し振りで茶粥を炊い
次へ
全31ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
矢田 津世子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング