その愛情の対象だった。よく良人のことを養子か入婿かと尋ねられたものだったけれど、人の眼にも姑と清子の仲はそれほどまでに映るらしかった。よく良人が冗談に、
「俺をそんなに放ったらかしにするなら、何処かへ行ってやるぞ」
 と嚇かしたものだった。
 それほどの姑を初めの頃は清子も少し恨んだことがある。良人が清子を妻にと望んだとき、シャゴマ[#「シャゴマ」に傍点]だからとけち[#「けち」に傍点]をつけたのは他ならぬこの姑だったのである。シャグマの清子は後でそのことを良人から聞いて、とても口惜しい思いをした。お釈迦さんでもやっぱり縮れているじゃないか、と良人に笑われて姑は納得したものの、今度は良人のほうが後あとまでも清子へ恩をきせる始末に、有難迷惑なようでもあった。
 仲人の助役の家で初めて清子を見かけたときの姑はニコニコした顔で、
「シャゴマ[#「シャゴマ」に傍点]はシャゴマ[#「シャゴマ」に傍点]だどもなし、あの嫁コ福耳だから家さうん[#「うん」に傍点]と福はこんで来るべ」
 と至極の上機嫌だったという。
 この耳は清子も持物の中で一等自慢にしているもので、肉の厚いぽってりとした耳たぼがとて
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