や花束がぎっしりと置き並べられて、折角のコーラスも、この色彩雑多な絢爛さに眩んでいるようであった。
会が果てて、ざわつき帰る人びとに押されて、わたくしも廊下まで出ると、楽屋入口のところで知人の娘に声をかけられた。傍に立って誰れかれへ挨拶をしている笑窪のよった愛想のいい洋装の婦人は、写真で見かけたことのある奥住女史に相違なかった。知人の娘は、わたくしの手を引っ張って、奥住女史に紹介した。
「御一緒にお茶でも如何でしょうか」
と、女史は、いかにも魅力に富んだにこやかな面をわたくしのほうへさしのべるようにして誘いかけた。
「あたくしたち、いま、銀座へくり出そうというところですのよ」
知人の娘はわたくしの手にしがみついて離さない。促がされるまま女史たちと行を共にした。弟子たちは、知人の娘をいれて四人であった。
「このひとたち、みんな、あたくしの可愛いヒヨッコですのよ」
車の中でも女史は弟子たちと巫山戯あった。両手を拡げて翼の中に抱え入れる仕草をすると、令嬢たちはキャッキャッと笑いこけた。
弟子たちの間でも、また、学校の生徒たちの間でも、奥住女史は慕われ騒がれているということを、わたく
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