※[#「やまいだれ+句」、第4水準2−81−44]女抄録
矢田津世子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)大和《やまと》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)尚|椋部秦久麻《くらべのはたのくま》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「やまいだれ+句」、第4水準2−81−44]
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 先き頃、京阪方面の古刹めぐりから戻られた柳井先生の旅がたりのうちに、大和《やまと》中宮寺の「天寿国曼荼羅」のおはなしがあった。わたくしは不幸にして未だに中宮寺をおとなう折にはめぐまれぬけれども、その曼荼羅繍帳にふれては、これまでも幾たびか人にもきかされ書物でも読んだ憶えがあるので、先生のおはなしにはひとしお惹かれるものがあった。
 現存する繍帳は片々たる小断欠を接ぎあわせたわずか方三尺たらずの小裂ゆえ一見すぐさまこれをもって一丈六尺四方の原形を想像することは難いけれども、しずかにこれへ眸をおくと華麗善美をつくしたそのかみの大繍帳が不思議に目のあたりくり
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