しょにいる処を想像するのは、わたし共と一しょというわけではなくって、誰か外の人と一しょにいるような夢を見ているのではあるまいかね。
画家。(驚きたる様子。)姉さん達と一しょでなくって、誰と一しょにいる事が出来るでしょうか。
姉。それはお前はお前で因襲の外《ほか》の関係が出来るかも知れないじゃないか。
画家。(手にて拒む如き振《ふり》を為《な》し、暫く間《ま》を置き、温かに。)僕は幾らか姉さんの助《たすけ》になりたいと思うのです。
姉。(甚だ意外に思うらしき様子。)何んですって。わたしを助けるのですって。
画家。でも姉さんが、朝から晩までおっ母さんに付いていて世話をするのは、随分苦しいでしょう。長年の事だから。何んでも年寄というものは、どんなに世話をしても、それを難有《ありがた》いなんぞと思ってはくれないものです。それに病気ででもあると癇癪《かんしゃく》を起して無理な事もいうでしょう。随分つらかろうと、僕だって察していますよ。
姉。お前がそうお言いなら、わたしは打明けてお前に言いましょうがね。実はわたしがおっ母さんの世話をするのも、因襲の外《ほか》の関係なので、わたしは生涯をその関係に委
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