すが、でき上がりが軟らかになることもありますから、薯蕷の乾粉を使用すると佳良であります。その割合は、蕎麦粉一升につき薯蕷粉八勺です。
(ハ)葛粉つなぎは、蕎麦粉一升につき上葛粉五勺の割にするとよいとのことであります。
なお東京市内ではないと存じますが、場末の蕎麦屋なり駄蕎麦屋では、鶏卵も薯類及び葛粉などを用いないで、米利堅粉を「つなぎ」に多く入れるところがあるかのように聞いています。その内ひどいのになると、蕎麦粉四合につき米利堅粉六合、即ち「四分六」の割にしているのもあるそうです。次は蕎麦粉五分の米利堅粉五分の半々位のものもあります。しかし実際蕎麦の「つなぎ」とするには、三割の米利堅粉は普通でありましょう。人によると、なァに一割でも二割でもつなぎなしでもできるといっていますが、これは当てになりません。
(ニ)昔は馬方蕎麦を打って
蕎麦屋の職人の達者な者は、昔馬方蕎麦を打って、板前の腕を磨いたという話であります。
その馬方蕎麦というは、四谷にあって俗に「四谷の馬方蕎麦」といって有名であったようであります。この馬方蕎麦、その他昔から有名であった蕎麦屋について蕎麦通の高村光雲翁の話
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