おられる位で、これほどまでにそばの真の風味をなつかしみ、求めている日本人が何故にこの満州人に知識を借りなかったのであろうかと思います。
 今までの日本人は、あまりに彼等を軽蔑し、あまりにお高くとまっていたのではありますまいか。眼を開けば到る所師ありで、人もあなどり、ものをいやしむ心の生じた時向上はない。今までの満州植民者が食物の点において、確固たる方針を定め得なかったのも、一面はかかる心持ちにわずらわされていたものではありますまいか。軽侮する者はまた恐るという通り、一方にはむやみに支那農民の食物は粗食でついてゆけぬと考えていると同時にまた反面、包米ビーンズに高粱飯を食わねば満州農業移民は成立せぬなどといっています。「閑話休題」蕎麦は栄養価値中[#「蕎麦は栄養価値中」に傍点]、重要の地位を占むるところの蛋白質に関して穀類中まことに優良なるものを含有しています。
 鈴木梅太郎博士が「満州に蕎麦のできることは満州植民者にとって実に幸福なことである」といわれるのもこの料理法であってはじめてうなずかるるものであります。(『糧友』第八巻第九号による)

 蕎麦の真味
 何に限らず、料理し過ぎたもの
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