む、風のひやびやと身にしみる丸木小屋に住ってふるえながら神様がお召になるまで泣きながら暮らさなければなりませんわね――
 死んだ子の年を数えるよりもっと無駄とは知りながらもお城の中での楽しかった暮しを思い出さなければならないんでございますわ。
第一の女 私はお二人のどちらがおよろしいのか又どちらが御悪くていらっしゃるのだかそんな事を定める力はございませんけど、法王様がお怒り遊ばした――と云う只そればかりがもうたまらないほど恐ろしいんでございますわ。
 法王様がお怒り遊ばした――神様だってお怒り遊ばしたに違いございませんわ。
 まあ私は何をお祈りしていいんだかそれでどなたにおすがり申上げたらいいんだろう。
老近侍 皆様御自分にお祈りなされ、御自分におすがりなされ。世の中に自分ほどたよりになるものはござらぬわ。
 法王様も――又陛下も、御自分の御力を偉大なものだとお信じなされたればこそこの事も出来たのでのう。
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三人の女は一っかたまりになって青い顔をして屋根の方を見、老近侍はだまってその三人の女を見る。
二人の若い男が家の影の方から走って来て四人の前に立ちどまる。女達
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