でのお願にはお偉いお方じゃ程に陛下もおだやかに「ならぬ」とばかり仰せられていらせられたが度重なる毎にはお二人のお心が荒立って、
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力ずくでも
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と法王様がついお洩しになったのをお気のつかぬ間に陛下がお伝え知りなされたのが事の始りで今ではもう火をかけた爆薬《はぜぐすり》の様にまことにはや危い御様子じゃとな……。何せ苦々しい事でござるわ。
第三の女 神様は敵を愛せと仰せられていらっしゃいますのに……
老近侍 それが人間と云う名から逃れられぬ証拠でござるわ。
まして強いもの同志の「けんか」は昔からともだおれときまって居る事での。
第二の女 法王様は神の御子だと聞いた事がございますわ。それで人なみ以上の御力をお持ちだと――若しお二人の間にお争いでも起ったら悲しい事だけれ共勝は法王様にお譲りなさらなければならないでございましょうよきっと――
第三の女 この立派な御城も粉々になって仕舞うでございましょうよ、神様の御怒りと法王様の御心でねえ。そうしたらまあ私達はどこに住むんでございましょう。
雪の降り込
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