曜に着る着物を着た男女が多勢出て来る。
人々は戸口に恐れた様にひざまずいて仕舞うのを法王は泣く様な無理な笑顔をして居る。
老爺が群の一人に何か話すわきからせかせかしながら、
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
老婆 ほんのこったぞ。
 これ皆の衆。
 御勿体ない、法王様は御病気でござらしゃるだに皆を祝福してやるとこらえてああやってござらしゃる。常ならば、はるばる参らねばお衣のはじさえようおがめぬに斯うやって――
 ああ、ああ、ほんにほんに――
[#ここから4字下げ]
第二の若僧に手を引かれて一番先に居た老人が法王の前にひざまずく。
細かく体をふるわして居る。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
老人 はあ、恐れ多い事でござりまする。愚か者がしらぬ間に犯した罪はさぞ数多いことでござりましょう。
[#ここから4字下げ]
法王はやせて骨の目立つ手を老人の毛のうすい頭にのせて黙祷する。
それから順々に二言三言感謝の言葉をのべるものや、中には狂的に法王の手を接吻したりさすったりして祈るものがあるかと思えば、身の浮くほど泣くの
前へ 次へ
全66ページ中58ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング