終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
 と申してお城の様子をきいたものさえあると申して居りましたの。
[#ここから4字下げ]
老近侍はだまって女達の話をきいて居る。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
第二の女 まあ――、初耳でございますわ。
 こんないやらしい事をじかにきかなかったのがまだしもの事でございますわ、ほんとうにねえ――
第三の女 あんな馬鹿な心配をしたと笑って仕舞う取越苦労だったら、どんなに嬉しいでございましょう――けれどそうは行かない事かもしれませんわ。
 一体お相手はどこの王様なんでございますの。
 若しお国そとに居る裸で真黒な顔をして居ると云う話の野蛮人となら私はかてるにきまって居ると信じて居りますわ。
 そのきたない人間達は鉄の鎧なんか持って居りますまいもの。
 ねえ貴方、ほんとうにお相手はどこの王様でいらっしゃいますの?
第一の女(極く低く細い声で恐る恐る云う)法王様でございますわ――
[#ここから4字下げ]
二人の女はだまって顔を見合わせる。暫時沈黙。
うめく様に非番の老近侍に云う。
[#ここで字下げ終わり
前へ 次へ
全66ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング