の中にたった一人にされた様にねえ。
第三の女 そんな事が? 私は一寸も知りませんの、きいた事だってないんでございますの、ましてこの頃は母のそばで仕事ばっかりして居るんでございますもの毎日毎日。
第二の女 私だって――もう此頃は一寸も心配な事は何にもないんでございます。
 あの子の病気がなおりましてからはねえ、心配の仕じまいをしたと思って居りましたの、お坊様にさえ来ていただいたほどでございましたものねえ。
 お話しなさって下さいましな、気になりますわ。
第一の女 私だって只きいたばっかりの事なんでございますけど……
 昨晩でございますわ。
 もうお月様がお沈みなさった頃、たくで御前から下って参りましてねえ。
 私の顔を見るなり斯う申しましたの。
 「陛下は大変御不機嫌でいらっしゃる、何か事が起るにきまって居るわ。あらましの事は知って居るが――」ってね。いろいろにききましたが頭が小さく生れついた女だと云うのでそれより外申しませんでした。
 今朝町に参った若い者は、町中のものが、
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良いおねだんの張った馬がさばけるし、武器の御注文は間に合いかねるほどだ
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