う色が幾分かかわるんでございますよ。
 あきませんわほんとうにいつまで見て居ても……
第二の女 まあほんとうに奇麗でございます事。
 でももうやがてに冬が来る前知らせなんでございますわ。
 ろくにあかりの入らない部屋の中で毎日毎日嵐の音をききながら寒さにめげて火の傍に置いてやってさえも鳴かない小鳥のふるえるの見ながらはだかの木の芽のふくれる時ばっかりまちかねて居なければならない冬がもうすぐ参りますわ。
第三の女 それにねえ、私は人様より倍も倍ももの寒がりなんでございますもの。
 もう冬と云う声をきくとすぐこう、ぞっとしてまるで風でも引いた様になりますの、貴方様なんかよけい冬がおきらいでいらっしゃいましょう。(老近侍に向って云う)
老近侍 神の御恵でござるじゃ、一向に冬をつらいとは思いませんでの、息子達が止めさえ致さなんだら雪なげなり何なり十五六の子に交っていたすでの。
第一の女 何よりな事でございますわ。(低く陰気に云う。間を置いて地面を見ながら)私は冬よりもっと恐ろしい、そしていやらしい事をききましたの。
 冬の来るのも寒くなるのも忘れて心配して心細がって居るんでございますわ。
 世
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