神のお恵を受けたので声がしわがれておねかし申した和子もこの様に御成人なされてわたくしがお寺の草の下に眠る様になればやがてこの歌をくり返すものもなく覚えて居るものさえなくなりまするでのう。
いとしい御方様じゃ。
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王の心の中は老人の唄った子守唄から生れた何とも云えない一種の悲哀がみなぎって歌の余韻を追う様にうす暗い隅を見つめる。老人は何もかも忘れた様に大きな額を少しうつむけていつの間にか居眠って居る。
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王 (老人のかすかないびきに驚いて)おう! もうねてじゃ。
まるで幼子の様に心持良さそうにいびきまでかいて居る……
誰か居るか!
小姓(部屋の隅から出て来る、いかにもねむそうな顔つきをしながら)陛下! お呼び遊ばしましてすか?
王 いかにも――
これ風を引くといかぬ。
わしが無理であったのう、部屋に参って暖かく寝むのじゃ。(老人を起す様にゆりながら云う)
老 わたくしが和子様とお呼び申しながらお起し申した様に貴方様はわたくしを御ゆすりなされたのう貴方様。
好い夢を御覧なされませ。
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