ら改行天付き、折り返して1字下げ]
老人 いずこからでござりますの、めったに見ぬ紋章でござりますのう。が、もう幾度も見たので忘れて居るのかもしれませぬが。
王  何! わしの家来のフランコニア公からよこいたのじゃ。
老人 何と申し越してござりますの?
王  下らん事じゃ、人間の申す事を申しよこいたまでの事なのだから。そなたの様にもう年を取ったものはあまり人間らしい人間の申す事は聞かなんだ方がよいのじゃ。
老人 わたくしの様に年取ったものは人々が十怒る所は精いっぱい四つ位ほかよう怒りませなんだ、そのかわりうれしい事もたのしい事も同じほどの。
王  わしもじゃ、わしはあまり下らぬ事をききすぎたのでがさがさとまるで一日中流シ元で洗いものをする水仕女《みずしめ》の手の甲の様になった心を持って居るのじゃ。
老人 したがのう、貴方様。尊い身分の人にはわからぬ事でござりまするが、貧しい一年中一枚の着物をまとって人の門に物乞いするのを恥かしいと思う処が[#「が」に「(ママ)」の注記]なりわいにして居る下賤なものどもは母親の胎から鳴きながら生れて三年も立てば、いじけた、かたくなな心を持つと申しますのじゃ
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