本乱れて居るがお気に入らなんで御家来衆を試斬りになされたもので、尊がられるお館毎の御台所をほっつきめぐってごみだらけの汗みどろになってござったのは名誉にうなされるお仁でござりましたのじゃ。
 御身なりと楽器と花束についやすお金で身代限りまでなされて文を送った婦人の門にパンのかけらをほおばりなされたり、歌う声をよくしようとて滝壺に座って歌ってござるうちに目がまわってそのままどこに行かれたか先のわからぬ様になられたも、フトもれきいた歌声とチラとかい間見た後姿に命がけでしのんで行かしゃったら思いもかけぬ御年よりで片目で菊石だらけでござったのに驚き様があまりはげしゅうてそのままはかなくなって仕舞うたお人は皆恋を恋してやりそこなったお仁なのでの。
 その頃は人間の用う言葉だけで話は通じ赤い色は赤い色で間違いなく見分けのついたものでござりまするのじゃ。
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この時小姓一人巻いた書いたものを持って来る。少し消えかかった薪をそえ燈心をとりかえ注意深く四方を見てから退く。
王は静かに巻物を開く。一寸目を通すとすぐ険しい目差しをして読むのをやめる。
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