神をうらやみ、下っては只一振りの剣が命の武士をうらやむと申すのは神でのうてはわかり得ぬほどいつの世にも変らぬ不思議な事の一つでござりますのう。
王 しかし、それはいつまで立っても人間にはわからぬ事に違いないのじゃ。
神の御領内にあまり人間の手の届くのは良くない事だからのう。
老 この頃は病をいやす薬が人間の手で出来る様になりましてのう。
まことに結構な事でござりますのが人々達はその生を与える薬でまるで反対の末長うござるはずの命をちぢめる事をよういたしますのじゃ。
まるで生き・死にを司っていらせらるる神の御力をうばうた様な事でござりまするわ。
この世の中から化物や病が少くなりましてからは――夜の神の御殿の厚い扉の中に封じ込まれてじゃとも聞きましてござりまするが――
悪魔はもそっと恐ろしい種を人々の心の中に植えつけましたと申す事でござりますじゃ。
したが、私はあまりいこう年を取ったので悪魔奴見限って魅入らぬのじゃと若いもの共は申して居りまするがのう。
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王は淋しい眼つきをして燈心のゆらめくのを見つめる。老人は骨張ったしかし柔かい手で王の手をこすって居る
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