したかのう、まるで十年も前に見た夢の様に思い出す事さえよう致しませなんだ。
 この貴方様にその様な事を申上たのも忘れて居ればこそ、さもなくば思い出す事がある毎にあまりの申上かたに御目にかかる事さえ出来ぬでござりましょうのう。
王  しかし、この様な思い出は考えたくもない事をしみじみと考えなけらばならぬわしをこの上なく慰めて呉れるでの、そしてその時だけもその時の罪のない幼子の心持で居らるるのじゃ。
 一番罪の深いのは「王」と名のついた者と昔からきまって居るのじゃ。
 法に随って大勢のためには老先の長いものの命も縮むるし威を守るためには又心にもない荒立った事をしなければならぬのは「王」と云うものの一生の仕事としなければならぬ事でのう。
老  のう、貴方様、下郎は、武士の身を、お主に捧げた自分のもので自分のものでない命を持って居るのは思わいで、
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武士であったらなあ、
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 と思いますものでの。
 武士は明け暮れ血眼で居らねばならぬ諸公の身分をうらやみ、諸公は王をうらやんで、すべてのものに仰がるる王は又
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