りおそいと申してのう、腹立ちまぎれに薬師に申しつけて三日三小夜眠りつづける薬をつくらせてそれをのむなりまるで息をせいで深く眠りこんでしまいましたのじゃ。
 三日三小夜は夢中にすごいて南のはてに居るけものの様な伸を致いてフト傍の玉を見ると気のつかなんだ間にまっさおに神がお造りなされてから万年も立った池の水の色の様になって居ったので、その人はもう気の狂うほど嬉しがってそれから後と申すものは鉄の箱を造った中に銀の箱を造った中に金の小箱を作ってその中に小石をかくいて一番大切な倉の一番深くに入れて置いたそうでの。そのうちにも年は立ち行いてその事がござってから十年も立った時に、その人は夜な夜な怪しい夢にうなされる様になったと申す事じゃ。
 何しろ金をくさるほど持った人じゃほどに罪滅しじゃと申して寺を建て僧侶を迎え致いたが一向に甲斐も見えいでうなされ始めてから三月立って死んで仕舞うたと申す事での。
 学問のある人も徳の高い僧侶もそれが乙女の持ってまいった四季毎に色の変る石を倉の奥等へしまい込んで置いたのが、祟ってじゃと気づくものがなかったのでその人は死なねばならぬ様になったのじゃと申す事での。
王 
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