面白い話じゃ。
したがのう、わしは三日前に使者の身なりと料紙だけはまことに見事な手紙をうけとったのじゃ。
法 中実《なかみ》は?
王 まことにはや年寄った女子《おなご》の背むしなのより見にくいものでの。
小姓に申しつけて直ぐ裂いてしまって燃してしもうたほどじゃ。
その見にくい手紙を書き記《しる》いたものも人|並《なみ》に眼が二つで耳まで口がさけて居らなんだが不思議じゃ。
法 その願うた事を貴方はお許しなされるか、
それとも打首かさらしものかにでもなされるかの、その憎い奴めを……
王 悪いと申すさえまだ言葉が上品なほどじゃ、
ならぬと申すさえまだにぶいのじゃ。
法 いかい事、気におとめなされてじゃ。
幾日ほどお考えなされたの、
にくい奴をどう処分しようとな。
王 一《い》っ時じゃ、ただの――
一つ事を一日以上考えて居るのは大脳を神からよう授からなんだものの致す事での。
世間でわしは賢明じゃと申す通りの頭を持って居るのじゃ。
法 さてさて、
鏡のかげんであばたもえくぼ
己惚《うぬぼれ》の生んだ児の頭は小うござってのう。
王 御事は母御がうみそこのうて
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