陽と共に歌い出て月に挨拶致いてからねぐらにもどったと申す事じゃ。
ところが或る日柄にない力にまかいてこれぞと云う目あてものうて朝早くから飛び出《いだ》いた。神の御社を下に見ながら大きな御館の上を越して飛んでまいるうちに天気が急にかわっていかい大風になって参ったので小鳥はそのかくれ家《が》を求めて居るとすぐそばに己れの飛んで居るより高い所にその梢のある大木が見つかったのでそこの葉かげに美くしい身をかくいた。
小鳥は木のかげでこの強い風にゆらりともせいで居る大木をいっち偉いものじゃと思うたので風がおさまってから己の棲家に羽根を休むるとすぐ、
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お恵み深うていらせらるる天の神様
私の美くしい姿と声を御返しいたしますほどに今日私の宿を致いてたもったあの木と同じにさせて下され
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と祈ったところが、地面の穴からそれをききつけた悪魔奴は人の悪い笑い様を致いてから、
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叶えてつかわす
木はそなたの様に美くしい羽根はいらぬのじゃから皆ぬいて仕舞え
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