らはどぶの上澄を見る事が噸ときらいになりまいた。
王  さてさてすきこのみの多い人じゃ。
 わしは御事とはあべこべに大好じゃ。
 細そい木片ですきまなくせせって、せっかく澄んだのを濁すのが面白うてのう。
 とは申せ上手に濁す濁さぬはかき廻し手の器用不器用によるのじゃが……
法  どぶのわるさも自らの落ちぬ限りでのう、泥深くてやたらともぐり込むそうでござるから……
王  勿論の事じゃ。
 わしはのう、夜毎にいろいろと老人達やら又は小鳥の様な者共からいろいろの話をきいたのじゃ。
 罪のない面白い話はわしの口のはたでおどり狂うて居るのでのう。
 久し振りに参った事故わしは御事に知って居る丈の話をきかすのをお事が見えたと申す事をきいた時から楽しみに致して居ったのじゃ。
法  欠伸の出ぬまでは……
王  まー、お聞きやれ。
 ある所にその名はわからなんだがうす赤い胸毛とみどりの翼と紫の様なまなこを持った小鳥が居ったと申す事じゃ。
 なりは鳥共の中でいっち小そうてはあったが色と声の美くしさはお造りなされた神さえ御驚きなされたと申すほどでの、神からも人間からも恵みは大したものであった。
 毎日毎日太
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