女工さんは、工場生活で肺をやられてしまうのは、もう常識になっている位のひどい搾取だ。信州の生糸工場では一日十二時間以上の労働で最低十八銭平均三十銭で真夏は百二十度の工場で苦しめられているとのことだ。
反動的な教化団体の組織(希望社その他)や君が代の暗誦、役人の忠君愛国主義鼓吹の講演、闘争を鈍らすための御用スポーツ、こんなのが唯一の文化的施設だ。本を読む会や文化サークルにすら弾圧が下っている。合法的に出ている文学新聞を読んだからといって首を切る位だ。病気になったとて、社会保険もなく、休養させてくれるどころか、合理化の首きりの好機会にされる。そして今日でさえ、このような状態であるのに、一度、戦争が拡大して「国家総動員」が公然とやられ始めると、労働者は、兵隊の賃銀と同額(つまり一日十五銭)で銃剣にかこまれた強制労働をやらされるのだ。
日本の農村ではどうか。
先ず、農業恐慌は今年に入って、また深刻になった。都市の失業者は年々、二三十万農村へ帰ってくるが、新しい仕事もなく一家の窮乏が増すばかりだ。農産物の価格の下落、収穫度の減少だけの問題だけでなく、農民には飢餓が迫っている。東北地方では女
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