のため「活気」を呈している。極めて少数の産業なので、未だ賃銀の低落が甚だしくないが、それでもソヴェト同盟の機械工の一ヵ月の収入に比べるとくらべものにならない相違だ。さきにあげた英国の労働者の報告でみると、一九三一年九月の収入は、一四〇ルーブル(円)であるのに、日本の一九三一年四月の一月の定額収入は、五十二円十四銭だ。約三分の一である。
機械でなく、製糸等の産業では、昭和元年を一〇〇とすると、今年四月は六〇・二の割合で、昨年四月を一〇〇とすると八七・九の割合である。そして大体、一昨年に比して、十五銭、昨年に比して五銭位宛の賃銀引下げが行われている。
賃銀がこのように下っているだけでなく、軍需生産等の動いている産業では、居残り、夜業等の労働強化で、不衛生極まる施設の中で、身体はどんどん悪くなって行くばかりだ。臨時工は、本工よりも極めて悪い条件でいれられて、失業の憂目を目の前にぶらさげて、資本家の戦時利潤の犠牲にしぼられている。
婦人の労働者は、男子の労働者の苛酷な条件に輪をかけたような、殖民地的な搾取にあっている。産前・産後の休暇はおろか、便所に行く時間さえ制限している。大抵の繊維の
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